従業員の遅刻に関してペナルティーを設けている会社は少なくありません。「1回につきいくら」という具合に、給与から差し引く会社もあるでしょう。例えば、「遅刻1回で500円を差し引く」と定める場合、この500円は「給与控除」と「減給」のどちらに該当するのでしょうか?
給与計算の基本は「ノーワーク・ノーペイの原則」
給与計算の基本原則となる考え方は、「ノーワーク・ノーペイの原則」です。
労務の提供が履行されず、それが労働者の責任に帰する場合は、対応する賃金の支払義務も原則として生じません。これは、労働契約法第6条が定める「労働契約は、労働者による労務の提供と、使用者による賃金の支払いとの“双務契約”」だからです。
ただし、「ノーワーク・ノーペイの原則」はあくまでも不就労分に対しての賃金支払いの義務が発生しないということです。遅刻等の制裁として、不就労分以上の賃金を控除してもいいという考えではありません。
行政解釈においても、「遅刻・早退の時間に対する賃金額を超える減給は、制裁とみなされ、労働基準法第91条に定める減給の制裁に関する規定の定めの適用を受ける」としています。
よって、今回の例のように「1回遅刻するごとに500円を控除する」ことは、不就労分の金額に関しては問題ありません。しかし、「5分遅刻して、500円を控除」という具合に、実際の欠勤時間分の給与を超える減額をする場合、その超えた金額については、減給にあたり、労働基準法第91条の適用を受けるということになります。
もし、減給の制裁を制度として運用するならば、就業規則などに制裁の章を設け、その中に規定するなどの対応が必要です。
遅刻や早退に制裁を加える場合には、平均賃金の1日分の半額以内の減給額にしなければいけません。1賃金支払期(通常は1ヵ月)の複数回の遅刻等に対する制裁としては、減給の総額が、その支払期の賃金の10分の1以内である必要があります。
まとめ
以上のように、遅刻に関する賃金カットには、遅刻によって勤務しなかった分の賃金を控除する「給与控除」か「減給」による制裁があります。それぞれを区別して制度設計したほうがいいでしょう。
ただし、「遅刻や早退に対して、30分単位で賃金を控除する」というように、実際は10分の遅刻でも、30分遅刻したとみなされ、給与から控除する場合は、「減給の制裁」にみなされますので、ご注意ください。