正直なところ、「給与を上げたい」と思わない会社員はいません。しかし、「給与を上げるかどうか」は、経営に密接にかかわる非常に重要な問題です。もし従業員から給与を上げてほしいと言われたらあなたの会社ではどう対応しますか?
今回は従業員からの賃上げ(給与アップ)の要求に対して、どのように対処すべきかを解説します。
従業員と会社との給与に関する考え方の違い
従業員にとって給与は生活の糧となる重要な資金であり、高いほどよいのは当然です。しかし会社や経営者にとって給与は人件費つまり支出であり、その金額には限りがあります。また、給与は会社によりその基準は異なりますが、給与規定の中で等級や評価によって算定されるのが一般的です。
「給与を上げるかどうか?」は、会社の「経営判断」で決めるべきものであり、労働者に昇給を求める権利があるわけではありません。これは、アルバイトの時給であっても正社員の基本給であっても同じです。したがって、従業員が「給与を上げろ!」と強く求めてきても、会社としては拒むことができます。
しかし従業員からの賃上げ要求に、まったく回答をせず放置をしては、従業員のモチベーションが下がり、離職率は上がる可能性が高いでしょう。こうした要求に応じるべきか否かの判断基準や、賃金を上げる場合の注意点を詳しく見ていきましょう。
どういう場合に昇給に応じるべきか
従業員が給与のアップを「要求してきた場合、対応に注意しなければならない3つの例をご紹介します。
1.あらかじめ昇給が確約されている場合
雇用契約の内容に昇給が確約されている場合は、労働者が求めなくても、必ず昇給をしなければいけません。また、会社のルールである就業規則や賃金規程で、昇給の条件を明示し、なおかつ昇給を求める従業員がその条件を満たしていることが明らかな場合も同様です。この場合、雇用契約の内容に従い従業員の給与を上げる必要があります。
2.公平性や平等性に欠ける場合
男女差別や人種差別などの差別があると判断された場合には、従業員からの求めに応じて給与を上げる必要があります。また、不公平を理由に昇給が認められる例としては、皆が同じ業務をこなし、その能力も同等にも関わらず、1人だけが昇給せず、その他の従業員すべてが昇給した場合などがあげられます。
とはいえ、不公平や不平等の判断基準はとても曖昧で、きちんとしたボーダーラインが確立されていないのが現状です。
3.会社にとって必要不可欠な従業員から昇給を要求される場合
会社にとって辞められたら困るような、重要な役割を果たす従業員から昇給を求められた場合、断れば離職してしまうという可能性も念頭に入れ慎重に対応し、ある程度の要求には応じた方が良いかもしれません。また、現状の成績が追い付いていなくとも、やる気があり今後の伸びしろが期待できる従業員には、将来を見越した賃金アップの対応が必要な場合もあります。成果に先んじて給与を上げることで、従業員のモチベーションを上げることも可能です。
給与規定で平等に判断をする
前述したように、昇給を望まない従業員はほとんどいません。とはいえ、従業員の要望をすべて受け入れてしまうと会社経営が成り立ちません。会社の経営者として従業員に言われるがまま昇給するのではなく、きちんと会社内の給与規定を設け、基準に沿って全ての従業員を公平に評価し、昇給を行うことが重要です。
分かりやすい給与規定とその目的を明確にすることの重要性
給与規定を社内に設けて従業員一人ひとりを評価し、客観的な判断をすることで、従業員に対して公平性が保てます。給与規定の中には、従業員の給与を上げる判断基準として、「人事評価制度」と「賃金テーブル」の2つのルールを設定しましょう。
人事評価制度とは、従業員個人の能力や貢献度、業績によって総合的に判断していきます。
賃金テーブルは、年齢や能力、職務などにより大枠の賃金を定めているもので、細かいルールは内規で決定するのが一般的なようです。
ルールは作成するだけでなく従業員に浸透させるべき
客観的な給与規定をしっかり作ったとしても、従業員に周知し浸透しなければ意味がありません。「なぜ要求したのに給与が上がらないのか」「他の従業員の給与は上がるのに、自分の給与が上がらないのはなぜか」といった疑問を経営者は解消する責任があるでしょう。
給与規定があったとしても、説明不足で内容が周知されていなければ、結局従業員の不平不満が爆発し大きなトラブルにつながる可能性もあります。大事になる前に、日々のコミュニケーションの中で評価制度について説明をし、社内に制度を浸透させましょう。
まとめ
経営側の期待や要求・メッセージを従業員自身が理解することで初めて、従業員一人ひとりが目標に向かって邁進できるでしょう。給与は仕事の成果や評価の表われでもあり、給与の金額そのものが仕事のモチベーションアップにもつながると理解することが大切です。
※弊社メディア「HR BLOG」より転載